グローバル人材|採用時の落とし穴

本稿では、グローバル人材の採用にあたって留意すべき落とし穴について書こうと思います。
ただでさえ人手不足の状況下(本稿執筆:2026年8月)、グローバルに活躍できる人材は間違いなく争奪戦になりますので、皆さんのご参考になればと思います。
本稿では、以下の前提を置いています。
- 求人主は日本の大企業。グローバル業務を担える日本人従業員を探している
- 求人対象は実務者レベル(いわゆる中堅層。役員レベルではない)
- 海外拠点の従業員とコミュニケーションできる能力は必須
なお、事の性質上、必ずしもグローバル人材の採用に限らず、一般的な採用における落とし穴も含まれています。
選考プロセスが遅くて他社に逃げられる
これはいわゆる有名大企業に比較的多いのではないでしょうか。
人材エージェントや自社のホームページなどで求人を出し、せっかく良さそうな人材が応募してきても、社内手続でモタモタしているうちに外資系などに採られてしまったというパターンです。
私も転職経験があるのでよくわかるのですが、前職を辞めて次の仕事を探しているときに何週間も放置されると「選考プロセスは本当に進んでいるのか?」「自分は採用候補者として重視されていないのではないか」と不安になるものです。
そんな時に、スピーディーに意思決定してくれる会社から「ぜひうちに来てほしい」と言われれば、心が傾くのも仕方ありません。
この問題についての対応策は、採用担当がこまめに候補者とコミュニケーションを取ることでしょう。
選考プロセスのスピード自体を上げることが本筋ですが、これが実際にはなかなか難しいもの。そうであれば、せめて採用担当者から、社内手続の進捗状況を伝えたり、他企業の選考状況を聞くなど、「あなたのことを気にしていますよ」というメッセージを継続的に送って安心させてあげるべきでしょう。
こういった配慮ひとつで、重要な人材を獲得できるか否かに差が生じます。
語学力を前面に押し出す人を、そのまま採用
これは、海外展開を加速する段階でやってしまいがちな落とし穴です。
語学力は確かに魅力的なスキルですが、あくまで仕事をする上でのツールにすぎません。重要なのは、その人の知識、経験、スキル、そして何よりその会社で周囲とうまく協働しながら仕事を進めていく能力です。
この「周囲とうまく協働」する能力は、日本企業では非常に重要な要素です。
海外の大学を出て現地で3年働いていた、といった経歴を見ると頼もしさを感じますが、いざ採用してみると、ひとりで突っ走って周囲に負担をかけ、結局会社を辞めてしまった、などというケースは少なくありません。
この問題への対応策としては、日本で働いた経験を丁寧に見ること、前職を辞めた経緯をヒアリングすること、そして可能ならリファレンスをとることなどが考えられるでしょう。
このように、面接や自己PRなどで、日本で働いた経験よりも海外で働いた経験ばかりをアピールしてくる候補者は少し慎重に検討したほうが良いというのが私の意見です。
赴任経験を前面に押し出す人を、そのまま採用
先ほどの語学力の項と近いのですが、前職で海外赴任の経験があるからと言って、グローバル業務を適切にこなすことができるとは限りません。
海外赴任の経験談を自信満々に話されると非常に頼もしく感じてしまうものですが、実際には前任のルーティンを踏襲していただけということもあるのです。
よって、前職の勤務環境をきちんとヒアリングすることはやはり重要です。同じ3年の赴任経験でも、日本人に囲まれた環境なのか、現地人と共にもがいたのか、密度は天と地ほどの差が生まれます。
余談ですが、語学力に関しても、海外赴任経験者だからといって実際の会議に耐えうる力があるとは限りません。10年も赴任していれば誰でもペラペラになるイメージがありますが、そんなことはないのです。履歴書や職務経歴書を盲信するのはNGです(当たり前ですけどね)。
採用条件を満たさないのに応募してくる
これは採用側の落ち度ではないのですが、「TOEIC✕✕点以上」とか「実務経験○年以上」などの応募条件を満たしていないのに、いわゆる「ワンチャン狙い」なのか、応募してくる人がいます。
そういう応募者を無条件にお断りできるのであれば問題ありません。
しかし、思うように採用が進まないときに、つい「もしかするといい人かも」とか「履歴書やTOEICの点数だけではわからないこともある」のように、逆の意味でポジティブに考えてしまうことがあります。
これは避けましょう。このような形の採用でうまくいったという話はあまり聞きません。
そもそも人が応募してこない
これも採用側の落ち度ではないのですが、本稿執筆時点では人手不足が継続しており、そのような中でグローバル業務を任せられる人材となると、企業側もそれなりのバリューを提供できないとそもそも応募が来ません。
このような状況では、外国人の採用も現実的な選択肢になるでしょう。
日本の場合、地理的な特性からアジア圏の人材が多くなるでしょうが、グローバル業務を任せられるほどの力があり、しかも日本語が堪能となると、これは相当に優秀な人物です。
そのような人材はやはり各社の争奪戦になるので、場合によっては「日本語が堪能」を条件から外す必要があるかもしれません。
そうすると、受け入れる側としても、①外国人従業員を腫れ物扱いしない、②しかしグローバル業務の丸投げもダメ、といった丁寧な対応が必要になります(外国人の人材を受け入れるときのポイントについては別稿を予定しています)。
なお、利発な人材であれば採用後に日本語が大きく上達することもよくある点、付記しておきます。
役員クラスが選考プロセスに口を出す
典型例は、契約社員から正社員に登用するときや、外注先の個人事業主を正社員として雇用するときです。
普段からその採用候補者と接しているわけでもなく、現場からも長らく離れている上位者が、なぜか「アイツはダメだ」と口出しをしてくるケースは少なくありません。
その上位者は、自分には人を見る目があると思っているのかもしれませんが、実際にその候補者と一緒に働くのは現場の従業員なのですから、具体的に誰を選ぶかといったプロセスにはあまり口出ししないほうが賢明です。
迷った時に見送る勇気がない
採用の選考をやっていると、他の応募者よりは良さそうだけど、かといって「ぜひ採用したい!」というほどでもない、微妙なラインに立つ人が出てくることがあります。
こういう時の判断は本当に難しいのですが、迷った時に見送る勇気は持っておかなくてはいけません。
急いで増員したい状況だと、「この人を見送ったら、これより良い人は来ないかもしれない」という考えが頭をよぎるので、その応募者のことが2割ぐらい良く見えてしまうもの。
それでも「微妙なライン」に感じているのです。
「そこそこ良いけど、ピンとこない」というのは、やはり何かひっかかることがある証拠。焦って採用してしまうと、やっぱりイマイチだった、と後悔することは十分に考えられます。
こんな落とし穴を回避するためにも、迷ったときに見送る勇気を持つことは重要なのです。
なお、私は「優秀な人を採用するよりも、問題児を採用しないことのほうが重要」と考えているのですが、このような方針があると、迷った時も比較的判断はしやすくなります。
最後に:スピードと慎重さのバランスを
グローバル業務を担う人材は争奪戦になることが多い一方で、書面や肩書だけで人物を判断することは当然ながら危険なので、採用プロセスはスピードと慎重さのバランスが必要です。
そんなことは文字にすると当たり前なのですが、複数の部門が絡むと「現場部門は急ぎたいが、人事で時間がかかる」など、なかなか簡単には行かないもの。
その意味で、自社にフィットする適切なグローバル人材を採用できるかどうかは、部門間の協調がカギと言えるのかもしれません。
この文章が皆さんの参考になり、飛躍の一助になればこれに勝る喜びはありません。
最後までお読みいただいてありがとうございました。

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