海外拠点を管理する「ハブ人材」に必要な5つの力

海外拠点を管理する「ハブ人材」

一般に海外駐在員は優秀な人材が選抜されます。一定の語学力を有し、かつ仕事もできる人ですね。会社としても相応のコストをかけて駐在させるのですから、優秀な人材を投入するのは当然のことです。

しかし、駐在員のように目立つ存在ではないが、実はとても重要なのが、日本から海外拠点をコントロールする人、すなわち海外拠点と日本をつなぐ「ハブ人材」です。

目次

グローバル企業における「ハブ人材」

ハブ人材の役割は、「本社の方針と現地の実態をすり合わせて、実務で機能する形に落とし込むこと」です。

例えば、グローバル企業は通常、グローバル行動規範だとか、グローバル経理規定といった一定のルールを設けています。当然ながら、そのようなルールは実行しなければ意味がないので、文書的に整備するだけではなく実務に落とし込むように海外拠点に説明したり、指導する必要があります。

一方、海外拠点には現地なりの事情があり、よくあるのは「現地の実態に合っていない」とか「人的リソースに余裕がない」といったものです。何も考えずに本社の言うままに対応してくれることはほとんどなく、むしろ真剣に考えているからこそ、いろいろな反論が出てきます。

しかし、グローバル企業として最低限守るべきルールや統制は、一部の海外拠点の事情を理由に例外を認めるわけにはいきません。ハブ人材には、本社の意図と、現地の事情をすり合わせながら、実現可能な落としどころを探るという、非常に高度な能力が求められます。

ハブ人材が直面する困難とは

この仕事、文章にするのは簡単ですが、実際にすり合わせを行っている時はなかなか苦しいもので、海外拠点からの批判の矢面にさらされることも少なくありません。

場合によっては日本側が課そうとしているルール自体がイマイチで、本社側に働きかけて修正しなくてはならないこともあるでしょう。多くの場合、本社側もルールを簡単に修正などしないので、不満を持つ海外拠点とルールを変えたくない本社側の板挟みに苦しみます。

また、従順に従うように見せながら、適当にやり過ごしている海外拠点もあったりして、そんな実態が数年後に内部監査で発覚することも珍しくありません。しかも、そういう海外拠点に限って「このルールは意味がない」なんてことを今さらねじ込もうとしてくるのです。

ハブ人材は、こういう難しい相手向き合い、説得したりはね返したり妥協点を探ったりしながらグループの統制を図る必要があるのです。これは大変な仕事です。

そしてこのような人材は、当然ながら一人いれば良いというわけではなく、営業、製造、研究開発、経理、ITなど様々なファンクションで求められます。(別の言い方をすると、企業としてもこういう人材を継続的に育成しておく必要があるということです)

ハブ人材が備えるべき5つの能力

では、ハブ人材はどういう能力を備えるべきでしょうか?これも言い出すとキリがないのですが、5つだけ簡潔に挙げておきましょう。

1、自分の言葉で伝えられる英語力

一定の英語力はやはり必要です。ネイティブレベルは全く必要ありませんが、誰かの翻訳や通訳ではなく、自分の言葉でコミュニケーションできるぐらいの力は求められます。

なお、「語学力」という書き方ではなく「英語力」としたのは、相手が中国であろうとフランスであろうと、通常、やり取りは英語だからです。

2、周りを動かす粘り強さ(Grit)

これは社会人一般に必要な要素ですが、ハブ人材にはより一層の粘り強さが求められます。

こちらからのメールに気づかないふりをする人を追いかけたり、時差の関係で早朝や深夜にオンライン会議をやったりしながら少しずつ物事を進めていくのですから、粘り強さは必須要件です。

3、業界・業務の十分な知識と経験

新しいルールなどを導入する際、「これが本社としての決定だから」だけで海外拠点が素直に従ってくれることなどほとんどありません。

意思決定に至った背景、判断の理由、ビジネスへの影響などを含めてコミュニケーションをとり、本社と現地を「通訳」するためには、相応の知識や経験が必要です。これがないと、「そのルールはムリだ。なぜなら…」と簡単に論破されてしまいます。

4、現地責任者との信頼関係

国は違えど相手も人間。関係性を構築していない人が急に出てきて「新しいルールに従え」などと言われても、反発したくなるのは当然のことです。普段からいろいろとコミュニケーションを重ねる努力をしているか否かは、その後の議論の進み方に大きな違いを生みます。

5、本社役員・上司との良好な関係

意外と見落とされがちなのがこれです。前述のように、ハブの役割を担う人材は色々な拠点から不満の矢面にさらされることがあります。そのようなとき、バックで役員が守ってくれるという感覚を持てるか否かは大きな違いです。

逆に言うと、役員クラスの人は「何かあったら引き受けるから安心しろ」という一言を与えてほしいのです。これがあるとなしでは、ハブ役の心理的な負担は雲泥の差です。

継続的な人材育成の重要性

いかがでしょうか。

本稿のようなハブ人材は、海外駐在員のように目立つポジションではありません。しかし、グループ経営においては、まさに中核を担う重要なポジションです。私はむしろ、こういうハブ人材がどれだけそろっているかが、その企業がうまくグループ経営を進められるかのカギになると思っています。

その意味で、企業としてもハブ人材を継続的に育成していかないと、今は好調なように見えても、5年後や10年後に苦しい思いをする可能性があるのです。

「企業は人なり」とか「人こそ最大の資産」などと言われるように、人材の重要性はいまさら説明するまでもありません。人材育成への投資というのは、すなわち企業の将来への投資なのですね。

本稿が少しでも読者の方のお役に立てばうれしいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

Altus Leap(アルタス リープ)代表 
公認会計士 TOEIC975点

日本のさらなる飛躍のためにはグローバル人材の育成こそがカギになるという信念のもと、「英語・ファイナンス・文化理解」をパッケージ化した研修プログラム「Altus Leap(アルタス リープ)」をスタート。
実務に直結したカリキュラム、受講者との徹底的な伴走、そして受講者が日本人であることを強く意識した指導により、海外を「任せられる」人材を完成させます。
研修講師は海外ビジネスに関する豊富な経験を有する公認会計士や弁護士などのエキスパートばかり。クライアントが高く(Altus)飛躍(Leap)するために、人材育成の面から強力なサポートを提供します。

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