グローバル人材|採用候補者を見るときの3つのポイント

日本企業が海外事業を本気で拡大しようとするとき、あるいはこれから海外市場に打って出ようとするとき、当然ながら最も重要なのは人材です。
本稿では、そのようなグローバル人材の採用を考えるときに留意すべきポイントについて、個人の経験を交えながら話していきたいと思います。
なお本稿の前提は以下の通りです。
- 社内人材の育成ではなく、社外から採用するケースを想定
- 採用ターゲットは実務部隊、すなわち若手から中堅クラスを想定(役員クラスではなく)
採用時に見るべき3つのポイント
そもそもグローバル人材とは、どのような能力を備える人材のことを言うのでしょうか。
いくつか人事系サイトを調べると、おおむねこんな要素が書かれています。
- 語学力・コミュニケーション力
- 異文化に対する柔軟性
- リーダーシップ
- 課題解決力
- 精神的なタフさ
これだけの要素を備えた人材が現実にどれぐらいいるかはともかく、書いてあることは正しいと思います。
しかしこれらはネットで検索すれば出てくる内容なので本稿では議論の対象にはしません。代わりに、私が本当に重要だと考える要素を3つ書きたいと思います。
①他人を属性で評価しないこと
国籍、居住地、勤務歴あるいは学歴など人には様々な属性がありますが、グローバル人材は相手の属性にとらわれることなく、フェアな視点で人を見る必要があります。
特に人種、出生地、性自認など「本人ではどうしようもないこと」は、一般的な日本人の感覚よりも非常にセンシティブであり、人を見るときにこれを持ち出すタイプの人はグローバル人材として危ういと言わざるを得ません。
また、これらのトピックが、場合によっては訴訟に発展しうることはご存知の方も多いでしょう。そういう無用なトラブルを起こさないという観点からも、他人を属性で見ないという資質はグローバル人材にとって重要です。(あまり語られないのがむしろ不思議です。)
なお、採用後に人を属性で評価する傾向が判明したら、躊躇することなく配置転換などを検討しましょう。こういうものは日常の言動に現れてしまうので、例えば若い女性社員や立場の弱い相手に対しては態度が変わるような人物はかなり危険です。
このような「人としての姿勢」は、若手のころはともかく、中堅レベルの年齢になるともはや変わらないように思います。なので、厳しく注意をすればあからさまな態度は引っ込むでしょうが、多くの場合根本的なトラブルの解決にはなりません。
②社内を動かす影響力を持てる人
「グローバル人材」と聞くと、海外に行く人、という印象を持つことが多いのですが、実際に何かを変えたり動かしたりするためには日本の本社を動かす必要があります。
ところが人は正論ばかりで動くものではないので、中途入社したばかりの社員が「○○をこうすべきだ!」と吠えるだけでは何も変わらないことがほとんどです。
むしろ、何をエラそうにと反発を食らうことのほうが多く、こうなってしまうと、せっかく採用した人材のポテンシャルを活かしきれないだけでなく、社内の軋轢にもつながります。
重要なのは「正しいかどうか」よりも「誰が言っているか」。
別の言い方をすれば「あの人が言うなら」という社内の動きを作れるかであり、そのためには少なくとも数年ほどの社歴は欲しいところです。
よって、外部から採用した人材を将来の中核ポジション候補者として考えているなら、いきなり海外拠点と本社の橋渡しを全面的に任せるのは避けたほうが良いケースもあります。
せっかく採用したのだから即戦力として全部お任せにしたい気持ちは理解しますが、社内での信頼形成を含めたスパンで人材の活用を考えることをお勧めします。
③体力がある人
国内で働いていても体力は重要ですが、海外関連の業務をしているとそれに輪をかけて体力の重要性は増します。
時差の関係で早朝や深夜に会議が入ることは当たり前、何かトラブルでも発覚しようものならスクランブル発進が必要です。
海外出張が続くと、言語の違い、時差の違い、食事の違い、慣れないホテルなどでジワジワ体力を消耗するのは経験済みの方もいるでしょう。
海外赴任も同じことです。赴任先の国によっては日本と昼夜逆転、早朝深夜の会議は日常茶飯事なうえ、子供を帯同して赴任するときは何かと業務外の要件が生じます。
体力の重要性もなぜかあまり語られないのですが、間違いなく重要な要素であると断言できます。
なお、ここで言う体力は、力任せに長時間労働する能力という意味ではもちろんありません。時差、移動、言語、慣習の違いなどがある中でも成果を出し続けるために、適切にコンディションを維持し続ける能力である点を申し添えます。
採用時にできる見極めの工夫
さて、ここまでグローバル人材が備えるべき要素について話をしてきましたが、これらを採用面接などの短時間で見極めるのは困難です。
とはいえ、できることはありますのでいくつか列挙します。
①リファレンスを取る
リファレンスとは、採用候補者の了承のうえで前職の同僚や上司などに働きぶりや人物像などを問い合わせることで、採用時に非常に有効な手段です。
最近は日本でも普及しつつありますが、海外、特に欧米諸国では日本以上にリファレンスチェックが行われます。
なお、採用候補者と共通の知人がいるようなときは(資格要件がある士業などでは珍しくない)、非公式に採用候補者の評判を確認することも可能です。
ただし、個人情報や守秘義務、あるいは本人がそれを知ったときのことを考えると、あまり派手に探りを入れることはお勧めできません。
②面接で海外経験を話題にして探る
面接の短時間で本人の人物像を見抜くことは難しいのですが、それでも海外経験、特にうまくいかなかったときやイライラした時の話を聞くのは有効なときがあります。
この中で、相手のお国柄のせいにする、あるいは「若い人は○○だから」「現地スタッフは✕✕だった」のような粗雑なくくり方をする人は、相手を属性で判断する傾向があるかもしれません。
③面談でこちらの属性を変えてみる
正式な面接の前にカジュアル面談を実施する会社は多いと思いますが、その時に採用候補者よりも若い女性などを面談員に含めてみましょう。もし、採用候補者が無意識のうちに「下」と見ているなら、言葉や態度の端々にその意識が見え隠れします。
カジュアル面談をやっていない場合でも、正式な面接でこれを試す価値はあります。
④SNSチェック
これは実施している会社も多いのではないでしょうか。過激な投稿や差別的な発言がないか等をチェックすることができます。
もちろん匿名アカウントもあるので限界はありますが、多くの人がSNSをやっている昨今、実名アカウントでも本音を書いてしまうことはよくあることです。
⑤試用期間の活用
3か月から6か月程度の試用期間を設けている会社も多いと思います。
「試用」と言っても実際にはほとんどの場合で本採用になるでしょうから形骸化している面もあるのですが、使うべき時にはきちんと使いましょう。
ただし、「試用=いつでも解雇できる」ではない点はご留意ください。
上記、いずれも単独では限界があるので、複数の手法を組み合わせることが求められます。
優秀な人材を採用するより、問題児を採用しないこと
どんな会社も優秀な人材は欲しいものです。まして海外ビジネスまでこなすような人物であればなおさらです。そのような人物が転職マーケットに出れば、間違いなく争奪戦になるでしょう。
しかし、「優秀な人を採用すること」よりも重要なのは「問題児を採用しないこと」です。
TOEICの高得点や海外赴任経験は、すぐにでも海外即戦力を増やしたい企業にはとても魅力的に映るでしょう。しかし、仕事はスペックだけで進むものではないので、いったん問題児を採用してしまうと、不適切な発言や態度によって同じ部署のメンバーだけでなく、海外拠点との関係がギクシャクするようなこともあるのです。
そして、その後始末は、別の誰かが多大なエネルギーを使ってやることになるのです。
グローバル人材の採用は、華やかな経歴よりも、地味なようでも本当に信頼できるのかを丁寧に見ていくことが重要です。
この文章が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

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