「定例会はムダ」ではない|グローバルチームでの活用法

皆さんは定例会に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。
検索エンジンで「定例会」を検索すると「定例会 無駄」という検索候補が出てくるぐらいなので、必ずしも良いイメージばかりではなさそうです。
確かに明確な目的がない定例会や人数が多すぎる定例会、あるいは同じ内容の繰り返しばかりの定例会は無駄になりやすいのも事実でしょう。
毎週あるいは隔週などで1時間ほど取られるので、メンバーに入ることに重さを感じる人もいるはずです。
グローバル案件にこそ定例会を
しかし、いろいろな国の拠点を巻き込みながらグローバルに何かを推進していくときに、定例会は非常に強力な推進ツールとなります。特に、関与するプレーヤーが多くなる時には有効です。
その典型例が内部統制監査(いわゆるJ-SOX)業務でしょう。
グローバルに事業を展開している企業であればSOXのテスト対象拠点も色々な国にまたがるでしょうから、日本の本社メンバーに加えて、米州、欧州、アジアなどの拠点責任者が加わり、トピックによっては親会社の監査人や海外拠点の監査人、さらには内部監査部門などが絡むこともよくあります。
こういう色々なプレーヤーと、進捗や解釈をそろえながら整備・運用評価を進めなくてはいけないのですから、定例会は「時間のムダ」どころか、欠かすことのできないコミュニケーションツールなのです。
定例会の5つの効用
そこでまず、本セクションを使ってグローバル案件における定例会の効用について整理しようと思います。
①コミュニケーションの質の向上
グローバルに案件を推進するときに、こちらは一生懸命説明しているつもりでも、思ったほど相手に伝わっていなかったとか、こちらの説明通りに理解してくれていなかったということはよく起こります。
色々なバックグラウンドを持ったメンバーが集まるので、日本人だけを相手にした時に比べてコミュニケーションを丁寧に行う必要があるのは当然です。
定例会は、「前回説明を受けた○○の件について質問がある」といったコミュニケーションを簡単に取れる場なので、コミュニケーションの質の向上に役立ちます。
②案件の推進力になる
グローバルで進めなくてはいけない案件は、なにかと遅延しがちです。「先週まで休暇をとっていた」「この国の祝日だった」など、こちらからすると「そんなことは前からわかっていただろう」と言いたくなるような理由を聞かされることは珍しくありません。
普段の定例会で「米州の状況は?」「欧州はどこまで進んでいる?」「次回までに○○を終わらせる」といった状況の確認を行うことは本社側にとっても有用ですが、海外拠点にとっても「見られている」「うちの拠点は他より遅れている」「進めなくては」という緊張感につながり、案件を進める原動力になるのです。
③ヨコの連携の強化
定例会を何回か重ねるうちに、自然と海外拠点からの参加メンバー同士でヨコのコミュニケーションが発生します。
「こっちでも前に同じ問題があった」「こういう時どうすれば良い?」といったコミュニケーションは、親会社(日本)からの一方通行ではなく、海外拠点どうしがお互いの状況を共有できる良い場になっていますし、現地から離れた親会社にはなかなかわかりにくい悩みなども相談しあうなど、ヨコの連携を期待できるのです。
④モニタリング強化
共有会で各拠点の進捗状況や問題点などが共有されることは、言うまでもなくモニタリングの強化につながります。
日本人は合意形成を重視する傾向があるので、物事を進める前に何かと関連部署などに確認をしたがるものですが、海外の人たちはそうとは限りません。
場合によっては各拠点が自己判断で「突っ走ってしまう」状況も生じうるので、定例会はその芽を早めに感知して軌道修正する機会にもなるのです。
⑤信頼感の醸成
実務上、かなり重要なのがこれです。
定例会の回数を重ねて、海外拠点で生じた問題の解決に取り組んだり、相談や質問に真摯に対応したりを繰り返すうちに、海外拠点メンバーからの信頼を作り上げることができます。
そうすると、何か新たな問題があったときに隠そうとせず素直に相談してくれるようになったり、時にはその定例会で扱っている案件以外の問題についても相談されるようなことが起こります。
このような良い信頼関係を構築できれば、かなり仕事もやりやすくなりますし、信頼されている、頼りにされていると感じられることが、こちら側のモチベーションにもつながります。
定例会を機能させるための注意点
上記のように、様々な効果がある定例会ですが、やはり有効に機能させるにはいくつか注意点がありますので、このセクションで触れていきたいと思います。
ただし、「ゴール・目的を明確にする」「資料はなるべく事前に共有する」といった注意点はネットで検索すればすぐにヒットするのでここでは触れず、私が実務を通して感じたことを中心に書きたいと思います。
①参加者の人数
本稿の冒頭で「グローバルで進める案件の場合、関与するプレーヤーが多いときほど定例会は有効」という旨を記載しましたが、そうは言っても限度があります。
一般に8人以上だと会議への参加意識が下がると言われているそうですが、私は最大で12人ぐらいまでが限度かなという感覚を持っています。
②伝わるまで伝え続ける
12人ぐらいが限度とは言っても、場合によっては20人ぐらいの大所帯で定例会が開かれることもあるでしょう。
その場合、1回何かを説明しただけで参加者全員がきちんと理解してくれることは困難です。
日本人同士でも適切なコミュニケーションは難しいのに、国も文化も理解度も違うメンバーが20人もいるのですから、相手に本当に伝わるためには一度ならず何度も伝える必要があります。
「伝わるまで伝え続ける」のは、伝える側の責任です。
③「見てもらえている」という感覚を持たせる
ときどき見られるのが、定例会にいろいろな拠点からの参加者がいるのに、本社側は規模の大きい拠点しか気にしていないような定例会です。
いつもアメリカの状況確認でほとんど終わってしまう、というパターンになると、当然ながら規模の小さい拠点からの参加者は単なる義務感で参加することになり、定例会の意義を大きく損ないます。
「あなたの拠点のことを見ているよ」と伝わるように、できるだけ丁寧かつ公平にそれぞれの拠点の状況をヒアリングするようにしましょう。
④「まあ良いか」を回避する
通常、グローバル案件の定例会は英語で行われますが、いろいろなメンバーが集まっているので英語のアクセントもバラエティ豊かになることが普通です。
当然、慣れないアクセントに戸惑って「何を言っているかわからない」となることもありますが、その時に「英語がうまい○○さんがいるから、まあ良いか」は避けなくてはいけません。これがまかり通るなら、そもそも定例会に出席する意味がないのです。
しかし現実には、こういうスタンスの人も出てきてしまうもの。
これを避けるのは簡単ではありませんが、日本側でファシリテートする人(おそらく英語が堪能なはず)の役割が重要になります。
- 日本側のファシリテーターが率先して「もう一度言って?」を言う。これにより、他の参加者が聞き直すハードルを下げる
- 日本側のファシリテーターが要所要所で「要するにこういうことだよね?」とサマリを入れる。日本人が話す英語は日本人にとって聞き取りやすいので理解の共通化に有効である
- 日本側のファシリテーターが、日本人メンバーが少し追いついていないような雰囲気を感じたら「○○さん、何か不明点はありますか?」など一拍入れる
定例会は「仕掛け」である
グローバルに物事を進めるときは、複数の拠点の複数の関係者を動かすのですから本当に膨大なエネルギーが必要です。メールを送っただけ、あるいは資料を共有しただけでは、人はなかなか動きません。
そんな中、定例会は義務的に参加する会議などでは決してなく、「次回までに○○を終わらせる」といった推進エネルギーを強制的に生み出し、しかも参加者の認識をそろえることができる優秀な「仕掛け」です。
「定例会」という言葉の響きに重さや抵抗感を持つ人もいるかもしれませんが、それをうまく使うか否かはこちら次第。
「定例会は無駄だ」などと一括りに否定せず、どんどん物事を推進してほしいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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